STORY
昭和40年代の初め。一ノ瀬真理子は17歳で、県立高校の2年生。運動会が雨で中止になり、帰宅して、レコードを聴きながら、ついうたた寝をしてしまう。次に目覚めた時、真理子は見知らぬ家の中にいた。そこへ、同い年くらいの女の子が帰ってきて、真理子を「お母さん」と呼んだ……。そこは真理子の家だった。真理子は42歳で、苗字は桜木。職業は高校の国語教師で、夫と17歳の娘がいた。うたた寝をしている間に、25年の月日が流れてしまったのだ。真理子は元の時代に戻れるまで、42歳の桜木真理子として生きていこうと決心する。まずは教壇に立って、国語の授業をしなければならない……。
十七の頃、やがて大人になってしまうことに、期待と共に、霧の中でくじを引くような不安も感じる。時は、一瞬も止まらない。容赦なく流れる。大人になれば、見える世界も変わる。自分が、別の自分になってしまう。消えてしまう今が愛しい。
だが、いつか気づく。時の階段を上った人々の胸にも、――《十七歳》は生きている。
前回の公演は新聞の劇評でも絶賛されました。しかし、世評以上に、観客の方々が舞台にぐいぐいと引き込まれ心をふるわせていたことが記憶にあざやかです。
もう一度観たいと願っていました。夢がかなって本当にうれしいです。
北村薫