左から筒井、畑中、成井、原田
※一部配役について話していますのでご了承願います。
筒井:はい、というわけで今回は、プロデュース公演『仮面山荘殺人事件』の舞台化決定を記念して、座談会を行います。脚本・演出の成井さんと、僕を含め、3人の出演者に集まっていただきました。いろいろ語っていきたいのですが、まずは成井さんに訊いちゃいましょう。この原作の魅力について。なぜこの小説を舞台化することになったのか、などのお話をお聞かせください。
成井:まず、この作品を上演することになったのは、何年か前に『ナミヤ雑貨店の奇蹟』をNAPPOS
PRODUCEで上演した後に、また東野さんの作品がやりたいなと思って、実はいくつか候補を考えていたんです。その中でも特にやりたかったのがこの『仮面山荘殺人事件』。これは1990年に発行された初期の作品なのですが、皆さん知ってました?
畑中:僕は最近読みました。
筒井:僕は2年くらい前ですかね。ミステリー小説を読みまくってる時期があって、その時に。
原田:私は知らなかったです。
成井:でも、実は僕も読んだのは2年くらい前(笑)
畑中:東野圭吾さんフリークの成井さんが!
成井:東野さんの作品は70冊くらい読んでいるのですが、初期の何冊かは読み逃していたんです。ちゃんと全部読まなきゃなと思ってたまたま手に取ったら、「これはとんでもないな!なんじゃこりゃ!」と思って。慌ててネットで調べてみたら、東野圭吾さんファンの間では初期の代表作として有名で。ベストテンみたいなランキングではたいてい上位に食い込むすごい作品だったんです。これはいつか芝居にしたいと思っていたら、こんなに早く機会が訪れて、うれしいです。
筒井:ということは、他にもまだまだ候補作が・・・
成井:あります!
原田:えー!聞きたい!
畑中:教えません!!
筒井:先のことも楽しみにしつつ(笑)。
好きな東野作品
筒井:今日集まっていただいたみなさんは、東野圭吾さん原作の舞台に出演されておりますが、好きな東野作品はなんでしょうか?
畑中:僕は結構読んでる方だと思っていて、「ガリレオシリーズ」も好きですし「加賀シリーズ」も好きなんですけど、今ちょうど映画化されている『パラレルワールドラブストーリー』も好きです。一番最初に読んだ作品なので。
筒井:タイムリーなもの持ってきますね!
畑中:ファーストインパクトがかなり強くて、そこから僕は東野さんの作品にハマっていったんですよ。なのでやっぱり、忘れられない作品は『パラレルワールドラブストーリー』ですね。
筒井:樹里ちゃんは?
原田:私、『容疑者Xの献身』の舞台が、劇団に入団して最初に関わった公演だったんです。
成井:覚えてる覚えてる!ずっとひたすら転換やってた!
一同:(笑)
原田:そうです、稽古場で!本番は舞台装置の盆を回すけど、稽古場では新人が転換をしていて。それもあって、『容疑者Xの献身』への思い入れは強いです。
筒井:僕もすごくわかる。関わった作品は、やっぱり上位になっちゃうよね。
原田:そうですよね。
筒井:勝手に「俺の物語」みたいになっちゃうから。『ナミヤ雑貨店の奇蹟』とかも、読み返したときに、自分がその場にいるような感覚で読んじゃうところがある。
畑中:その世界に行ったわけだからね。
筒井:成井さんは、他にも好きな作品はありますか?
成井:さっき畑中が挙げた「ガリレオシリーズ」はほんと好きだし、「加賀シリーズ」も好きだね~。この2つのシリーズ、すごいよね。
畑中:(立ち上がって)すごいです!本当にすごいです!!
成井:新作が出るとすぐ買って読みたいと思う。
筒井:ガリレオ先生も最近アメリカから帰ってきて、また活躍が…
成井:はいはい、おもしろかったね~。
畑中:まだ読んでないんですよ~。それ以上は言わないでください!
どのように舞台化するか
筒井:今回は山荘での殺人事件がメインになるけですけど、成井さん、どういった形で構想されていますか?
成井:原作通りです。密室というか山荘内から基本的に出ませんが、回想シーンがたくさんありますからそれはやります。だから、舞台は山荘の中だけど、場所や時間が飛ばないわけではありません。基本的に時間が山荘の中で進むということは、ストレートプレイというか新劇というか、リアリズムには近づくんじゃないかと思っています。
筒井:原作全体に描かれているピリピリした空気感というか、緊張状態が続いていると思うんですけど、こういう緊迫感を舞台で表現するのは楽しみです。
成井:そうだね。雰囲気は『容疑者Xの献身』に近いかも。しかも密閉されているからね。あとは、ダンスはありません。これは踊っちゃダメでしょう。
筒井:踊る準備万端だったんですが(笑)
原田:『容疑者Xの献身』もダンスシーンはありませんでしたしね。
畑中:僕は、違和感をたくさん残せたらいいなと思っています。
原田:読んでいる時に「なんでこんなこと言うんだろう?」とか気になったことが、最後につながるというか。
筒井:小説ならではなんですけど、最初から文字で読んでる人にはわからない布石があるじゃないですか。そういう布石を、視覚化された舞台でいかにお客さんをだましていくか。
畑中:なるほどね。(舞台は)やったら見えちゃうからね。僕らの演技のさじ加減も難しいよね。
原田:そう、すっごく難しい。
筒井:心情的には知ってるはずなんだけど、お客さんを驚かせようと思うとあえてそれを出してはダメだったりするから。これはやっぱり稽古場で試していくことになりますよね。
成井:そうだね。僕は先読みせずに読むので、この小説は本当にびっくりしました。何とか、この舞台を観たお客さんにも僕と同じくらいびっくりしてほしくて。そのびっくりっていうのも、人間の生き方とか心情に突き刺さってくるものじゃないですか。そこが東野さんの魅力だと思うんですよ。トリックがトリックで終わらない、人生そのものにかかわってくる。その点はこの先も変わらないので、何とかお客さんをびっくりさせつつ、感動させたいと思います。
三人の配役
筒井:今回出演する僕たち3人の役どころについて、成井さんから一言ずつお願いします。
成井:では筒井から。木戸信夫の職業は医師。
筒井:お医者さんは何回かやってますけど、今までとは違いますよね。
成井:そうですね。小説で描かれているもので言えば、嫌な役ですね。
筒井:神経質な役ですよね、ちょっと粘着質というか。そういうところを、観てるお客さんにどれだけすぐにわかってもらえるかが、まず最初のミッションかなと思っています。
成井:ここまで嫌な感じの人の役は初めてじゃない?
筒井:たぶんそうです。僕としてもこういう役ができるのはうれしくて。自分とかけ離れた役をやるのは楽しいじゃないですか。
原田:わかります。
筒井:なので、新たな引出しを増やすためにも全力で頑張りたいなと思います。
成井:次は原田ですね。下条玲子。これは要するにクールビューティーですね。
畑中:このキャスティング大丈夫ですか!?
一同:(笑)
原田:本当に。でも最初役を知らずに読み始めて、下条玲子が登場した時の描写で、この役かもしれないと思いました。
筒井・畑中:(笑)
原田:これは私しかできないわ!と(笑)宝塚の男役っぽく、髪が短くてかっこいいと書いてあって、これかもしれないと。
筒井:見抜かれちゃってますね!
原田:最後まで読んで、この役そういうことかと。腑に落ちました。どういう人なのかが分かりにくくて、高之さんも不思議な女性だって頻繁に言ってるんですよ。でも最後まで読んで、「だからか!」と。
成井:では畑中。畑中はジン。
畑中:最初読む前に、プロデューサーからジンの役ですって言われたんですよ。山荘に来る強盗の役と知ってたから、巻き込まれていくのかなと思ってたら、めちゃくちゃ場面まわしてるし、ずっといるし、なんじゃこりゃ!と。比重が大きくて驚きました。あと、最後まで感じる違和感、最後に「あぁ、なるほど。」と腑に落ちるんですけど。これはどういうバランスで演じればいいのかと思いながら読みました。僕もこれまでにやったことがない役なので楽しみです。とにかく小男と何度も出てくるので、いっそもう少し(自分が)小さくならないかなと。
原田:十分十分!
一同:(笑)
畑中:でも、すごく大好きなキャラクターなので、(タグ役の)オレノグラフィティさんと頑張っていこうと思います。
成井:悪役だけどただの悪役じゃないよね。それがおもしろいなぁ。嫌なヤツなんだけど、ただの嫌なヤツで終わらない面白さがあるよね。タグとのコンビもいい!
筒井:大男と出てくるので、最初読んだときは僕がタグかと思ったんですけど、違いましたね。樹里ちゃんが言ったように、「これ俺かな?」と思った瞬間があって、「腹が減った。」というセリフが出たときに、これは俺かなと思った!
一同:(笑)
畑中:腹が減った役が全部自分だと思うなよ!
成井:今回、初めてご一緒する方もいるのですが、キャスティングは僕とプロデューサーで話したんだけど、ベストキャスティングですよ!
畑中・筒井・原田:おお!(拍手)
韓国公演
筒井:実はこの公演は、同時に韓国公演があるんですが、成井さん、僕たちが韓国に行くということですか?!
成井:行けないんですよ~。
筒井:あれ、スケジュール空けちゃったんだけど。
一同:(笑)
成井:僕が脚本を書いた東野さんの作品は2本とも韓国で上演されています。韓国の団体がやったわけですけど。今回は別の団体ですが、『仮面山荘殺人事件』も上演してくれます。韓国の俳優と演出家によって作られて、僕が監修することになっています。
筒井:出演できなくても、観に行きたいですね!
畑中:韓国に旅行に行きたいと思っている方、ぜひこの機会にいかがでしょうか。
公演への意気込み
筒井:最後にこの公演への意気込みを一人ずつお願いします。
原田:原作物を舞台化するときに、原作の素晴らしさはもちろんあるのですが、舞台の魅力を出したいなといつも思っていて、今回の作品って演劇でやることによってさらに魅力が増す作品だと思うんです。
成井:まったくその通り。
原田:原作の魅力を存分に舞台で発揮できる作品だと思うし、お客様にも楽しんでいただけると自信をもって稽古に挑みたいと思います。
筒井:このような極限状態に置かれた人間を演じるというのもなかなかない機会なので、非常に楽しみにしています!
畑中:小説にハマったキッカケのジャンルがミステリーなんですよ。なので、本格ミステリーに出演する機会をいただけたことに本当に感謝していますし、41歳になって心躍る気持ちなんです!これを舞台化するからにはお客さんには2度観てほしい。すべての真相を知った後に、もう一度頭から観ると全然違う見方ができると思うんです。
筒井:僕も記憶を消してもう一度最初から読みたい!
畑中:1度目と2度目で、かなり印象が違う作品なので、僕なら2度行きたい。そう思ってもらえる作品にしなきゃいけない。そして、来ていただいた方には必ず満足してもらえる作品にしますので、ぜひ劇場に遊びに来てください!
筒井:では最後に成井さんお願いします。
成井:映画監督のヒッチコックが、「自分の映画はよくミステリーと言われるけども、ミステリーを撮ったことは一度もない。自分はサスペンスを撮ってるだけなんだ。」と言っていて、ミステリーは映画にしても面白くない。たとえばテレビの本番中に爆発するという設定があったとして、ミステリーの場合は、その爆弾を誰がいつ仕掛けたのかを解いていくんだけど、サスペンスの場合は、爆弾が仕掛けられたところから始めて、見てるお客さんが「いつ爆発するんだろう?」とドキドキしながら見ていて、そのハラハラドキドキがサスペンスだと。ミステリーは謎解きでパズルを解いていくものだから、本で読むと面白いけど映像ではまったく動きが出ないので面白くないと言っていて。でも『仮面山荘殺人事件』は舞台化した時にミステリーの要素とサスペンスの要素が両立してますよね。それがすごいところで。東野さんはミステリー作家なんだけど、舞台化させていただいた過去2本も今回の作品も2つの要素が見事に両立している。だからこれは、(小説としては)本格ミステリーなんだけど、単にミステリーじゃない、一級のサスペンスなんだと訴えたい!その上に人間ドラマなんですよ。そこがすごい。ハラハラドキドキだけじゃ終わらない。痛いというか、心に突き刺さる物語を必ず書いてくれるんですよね。ミステリー・サスペンス・人間ドラマの豪華3本立て!だから僕は東野さんの小説が大好きで、舞台化したいと思ってしまう。ぜひ観てほしいです!
筒井:力強いお言葉ありがとうございました。それではみなさま、劇場でお待ちしております!
一同:お待ちしております!!