- 仲村
- それでは、ナッポスプロデュース公演『スキップ』について、座談会を行いたいと思います。
- 成井岡田粟根
- よろしくお願いします。
- 仲村
- 進行する私は、プロデューサーの仲村和生です。では、みなさん、自己紹介を。
- 成井
- 脚本・演出を担当します。キャラメルボックスの成井豊です。
- 粟根
- 父・尾白先生・岩村、いろいろやります。劇団☆新感線の粟根まことです。
- 岡田
- 主人公・真理子の夫、桜木を演じます。岡田達也です。
- 仲村
- キャラメルボックスで上演したのは、12年前で、今回13年ぶりとなるのですが、成井さん、作品についてお聞かせいただけますか。
- 成井
- キャラメルボックスではずっと私と真柴のオリジナル作品をやっていたのですが、12年前のこの作品から原作物をやりはじめて、1本目か2本目だと思います(※『賢治島探検記』をカウントすると2本目となる)。まだ手探り状態でやっていて、この『スキップ』には僕の言葉は一切加わっていないんです。カットしかしていません。初演はとても手応えがあって、特に劇団員からの評価が高くて、「またやってください」と何人からも言われたのですが、なかなかチャンスがなくて。なかなかできないなぁ、と思っていたら、突然、仲村和生から「やりたい!」と言われたので「やりましょう!」と答えてしまいました。自分でもとても気に入っている作品です。
13年前の感想
- 仲村
- 今回の出演者の中で、唯一、初演に出ていた岡田さんはいかがですか。
- 岡田
- 芝居の中身の記憶よりも、舞台装置を全員で動かして、転換作業をしなくてはいけなかったり、一人が何役もやったりしたことを強く覚えています。全員が、「このシーンの次は盆を回す」、「次は着替える」と、あんちょこを作って、袖で確認していました。舞台上の演技以外でやらなければならないことが本当に多くて。総合力というか、集団で作った記憶があるので、これをプロデュース公演でやるのは大変だろうなと。
- 仲村
- そして、その初演を客席で観ていた粟根さん。
- 岡田
- 覚えてます?
- 粟根
- 覚えてます、覚えてます。真ん中に盆があったんです。そこにジャングルジムのような透けた装置が組まれていて、それをみんなで回すことによって、時間の経過とか、場所の移動とかを表現していて。すれ違って離れていくというのが、すごく印象的だったのを覚えています。あとキャラメルボックスが小説を舞台化した、ほぼ一作目だったじゃないですか。この時は、とてもびっくりしました。北村薫さんのことが好きで、この『スキップ』も、「円紫さんシリーズ」(※落語家・春桜亭円紫が登場する、『空飛ぶ馬』に始まる推理小説シリーズ)なども読んでいて。一体どうやってやるんだと思っていたので、二人で真理子を演じるというのが、印象的でした。
真理子を二人の女優が交代で演じる。
- 仲村
- それこそが舞台版の特徴で、一番演劇的な部分ですよね。
- 成井
- 「真理子を二人の女優が交代で演じる」ということを思いついた瞬間に、いける(舞台化できる)、と確信しました。
- 仲村
- 普通なら現代と回想シーンで二人の真理子を分けると思うのですが、同じシーンに共存しているのは、最初の段階から?
- 成井
- それは稽古場で作りました。二人が入れ替わる瞬間とかどうすればいいか考えてなくて、役者から出たアイデアが多かったです。
- 粟根
- 初期の台本では、真理子17と42というのは、分かれてなかったんですか。
- 成井
- それはありました。でもね、結構入れ替えました。
- 岡田
- こっちは42歳がしゃべろう、これは17歳がしゃべろうって、稽古で決めていきましたね。
- 仲村
- 脚本は、その真理子の部分以外は、ト書きまで小説の地の文になっているので、読んだだけでは想像がつかないと思います。
- 成井
- そうだろうね。
- 粟根
- 地の文を全員が読む、というシステムが、もう一つのエポックだと思うんです。見る人に与えるルール。その新機軸をお客さんに浸透させるのが面白くて。
- 成井
- 地の文を役者に語ってもらうのは、北村薫さんの原作というのが大きかったですね。北村薫さんの文章そのものが素敵なので、地の文もお客さんに聞いて欲しいと思ったんです。
- 仲村
- 今回は、改訂はされるのでしょうか。
- 成井
- 脚本は点検します。原作が変わらないのでストーリーが大幅に変わることはないでしょうけど、12年の間に30本近く小説を舞台化してきているので、作家としても変化してると思うんですよ。だから、たぶん、変わると思いますね。
- 岡田
- 今回は、半数がキャラメルボックスのメンバーじゃないし、新しい感性が加わりますから、どう成井さんが料理していくのか楽しみです。
- 粟根
- どうなの?12年ぶりに、同じ役を自分一人だけがやるっていうのは?
- 岡田
- 自分だけが同じ役でっていうのは、さすがに初めての経験で。
- 粟根
- みんな稽古しながら、岡達の目を見ると思うよ。成井さんの目は怖くて見られないから(笑)
- 岡田
- キャストの中で、粟根さんが一番年上ですよ。みんな粟根さんの顔色見るんじゃないですか。
- 粟根
- いやいや(笑)。初演の時は、いくつだったの?
- 岡田
- 36ですね。
- 粟根
- 桜木先生に近い年齢になったからこそ、楽しみなところだね。
- 岡田
- ほんとに、実際の年齢が役に追いついてきて、どうやるのか、自分でも楽しみです。
十年ぶりの成井演出
- 仲村
- 粟根さんは、成井演出は久しぶりなのでは?
- 粟根
- 2007年の『まつさをな』(※キャラメルボックスの時代劇)以来ですから、ちょうど十年ぶりですか。
- 成井
- お世辞ではなく、僕、粟根さんの大ファンなので、本当にうれしいです。粟根さんの何が好きって、身体表現が好きなんですよ!『まつさをな』に出ていただいた時も動く動く(笑)。
- 粟根
- その前が『ミラージュ』で2000年。更にその前が『シアターエクスプレス』。その前が『天国から北へ3キロ』です。(キャラメルボックスの)西川くん、大森さん、加藤さんとは、26年のつきあいですね。
- 岡田
- 僕も『天国〜』は手伝っていました。
- 粟根
- だから初めて岡田くんと会ったときは、まだキャラメルボックスの劇団員になる前。保留になってる頃(笑)
- 岡田
- そうそう入団前だ(笑)
- 粟根
- まさかそんな人が、今やキャラメルの看板になるとは。
- 岡田
- (爆笑)
- 粟根
- その岡田くんと、成井演出で再び共演できるのはうれしいです。
主演の二人について。
- 仲村
- 主演のお二人の印象をお聞きできますか。
- 成井
- 霧矢さんは、写真撮影の時にお会いしたのですが、関西の方なんですね。おきれいな方なのにサバサバと関西弁で話しかけてくれて、打ち解けることができました。
- 岡田
- 元宝塚で月組トップスターです。
- 粟根
- 宝塚時代は、男役ですか。
- 岡田
- そうです。
- 仲村
- 撮影中も、颯爽と歩く姿勢が格好良くて。
- 岡田
- とてもフランクで話しやすかったです。宝塚でトップを張るくらいの方って、人としての魅力が大きいですよね。知っている数人の方を含めですが、オーラというか、言葉で説明できない魅力があります。
- 成井
- 霧矢さん、ほとんど外人の役しかやったことがないって。
- 岡田
- あれ、面白かったですね(笑)
- 成井
- 現代の日本人の役はやったことがないって、仰ってました(笑)
- 仲村
- 確かに!僕は、『スカーレット・ピンパーネル』、『ラ・マンチャの男』、『THE LAST FLAPPER』など、いろいろ拝見しているのですが、全部洋物でした。
- 粟根
- 深川さんともお会いされたんですか。
- 成井
- はい。霧矢さんと一緒の時に。深川さんとは30歳違うんですけど、とっても話しやすかったです。
- 粟根
- 5年間乃木坂46にいらっしゃったんですよね。
- 岡田
- 乃木坂では「聖母」と呼ばれていたそうです。
- 仲村
- 乃木坂のシングル『ハルジオンが咲く頃』のセンターが深川さんです。
- 岡田
- 僕、つい先日『嫌われ松子の一生』という舞台で、乃木坂のメンバー(桜井玲香さんと若月佑美さん)とご一緒したんですけど、とても真剣に、真面目にお芝居に向き合う人達だったので、感心しました。日本のトップアイドルの人達というのは、ここまでやるのかと。
- 成井
- いきなり(深川さんから)腹式呼吸のやり方を質問されたんでしょ?
- 岡田
- そうです、びっくりしました。彼女もとても真摯な人で、楽しみになりました。
- 仲村
- では最後に、お客様に向けてメッセージを一人ずついただけますか。
- 岡田
- 役に近い年齢になって、いったいどんな風に桜木のセリフを吐くんだろうと、自分でも楽しみです。初演の時に見えなかったものを見つめて、真理子を支えられればと思っています。
- 粟根
- 今回は、13年前の『スキップ』とは違うものに仕上がるだろうし、でも、同じになるところもあると思う。また、キャラメルボックスを観たことがないという人や、霧矢さんや深川さんのファンのみなさんにも、楽しめる作品になるはずなので、ご期待いただければと。あ、あと、西川浩幸の代わりをちゃんと務めます。
- 全員
- 笑
- 成井
- 原作ものをやる時は、その原作が大好きだから、その原作が持っている魅力、自分が大好きな部分をお伝えしたい、と思っているんです。『スキップ』も、こういってはなんですが、北村先生の作品の中でも一番好きで。原作ものをやり始める時に、まず『スキップ』を選んだのも本当に好きだからなんですよ。で、12年前に頑張って作ってベストを尽くしたのですが、その後、様々な原作ものをやる中で、いろんなノウハウが蓄積されて、今の自分が『スキップ』を舞台化すると、きっと違うと思うんですね。原作の素晴らしさを伝えたいだけなので、どんなにスタイルが変わってもハートは変わらない。この12年で私も進化しているので、12年前に観た人も、もういいやって思わずに(笑)、ぜひ来て欲しいです!
- 粟根
- これは、読んでから来た方がいいんですか?
- 成井
- まだ読んでない人は、読まずに来ても大丈夫です。
- 岡田
- 問題ありません。
- 成井
- 私ね、私ね、私のお芝居を観て、原作を読んでみよう、と思って欲しいんですよ。そして小説を買って欲しい!
- 粟根
- そうですね。
- 岡田
- 観終わった後に、小説買いたくなるような作品を目指しましょう!
- 全員
- 劇場でお待ちしております!